独立行政法人 農業者年金基金

理事長挨拶

理事長 黒田夏樹(くろだ なつき)の写真

 独立行政法人農業者年金基金(以下「基金」という。)は、国民年金の給付と相まって、農業者の老後の生活の安定と福祉の向上を図るとともに、農業者の確保に資するとの目的を実現するため、特殊法人農業者年金基金を母体として平成15年10月1日に設立されました。

 我が国の公的年金制度は、サラリーマンを対象とする厚生年金制度が早くから実施されてきましたが、農業者等の自営業者を対象とする年金制度は大きく立ち遅れていました。

 このような状況を踏まえ、「農業者にもサラリーマン並みの年金を」という農業者と農業団体からの強い要請活動の下、政府において検討が進められた結果、昭和45年5月に農業者年金基金法が可決・成立し、昭和46年1月から、年金事業(旧制度)が開始されました。

 この事業は、年金給付等に必要な費用を現役世代の加入者からの保険料で賄う「賦課方式」で実施されましたが、その後、農業の担い手の減少や高齢化の進展等に伴い、現役世代の保険料負担を大幅に引き上げざるを得ないという事態となりました。

 このため、政府と農業団体等による2年余にわたる検討の結果、平成13年5月に農業者年金基金法を一部改正する法律が可決し、平成14年1月から 、新たな年金事業(新制度)が行われています。

 この新たな年金事業は、加入者自らが積み立てた保険料とその運用益を合わせた額により、将来の年金給付に充てる「積立方式」で実施され、農業者であれば広く加入できるとともに、一定の要件を満たす農業者には保険料の国庫補助を行う等、これまでの事業にない新たな措置が導入されるといった特徴があります。

 現在、基金においては、新旧の制度を併せて全国で約26万人の農業者の皆様に、年間約662億円の農業者年金をお支払いしています。また、基金とその業務受託機関(農業委員会系統組織とJA系統組織)との連携による加入推進活動の展開により、積立方式の新制度への加入者累計数(令和6年3月末現在)は、13万6,060人となり、新制度による年金受給者数(同)も 5万7,126人と年々増加してきています。

 他方、積み立てられた年金原資については、運用の効率性を考慮し、基金が保険料と国庫補助を一括して運用しており、その大半を占める被保険者ポートフォリオの運用利回りは、平成14年度から令和4年度までの平均で2.74%となっています。

 社会全体が少子高齢化していく時代を迎え、農業者年金制度は、終身年金として、老後保障の面から担い手を支えることのできる唯一の農業施策であり、担い手の確保対策として、当基金が効果的かつ効率的な業務運営を行うことが求められています。

 このような中、基金の業務運営については、農業者年金記録管理システムの活用等を通じたデジタル化の推進を図るとともに、加入者・受給者等の多くの個人情報を保有している基金のリスクマネジメントに対応するための内部統制の充実・強化を図るほか、情報セキュリティ対策と個人情報保護の強化・徹底にも取り組んでいます。


令和6年4月
独立行政法人農業者年金基金
理事長 黒田 夏樹


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