独立行政法人 農業者年金基金

全国農業委員会女性協議会会長 道下和子

 全国農業委員会女性協議会会長 道下和子
みちしたかずこ
宮崎県延岡市生まれ
息子夫婦、夫、スタッフと共に乳肉複合経営200頭

広島県庄原市農業委員会会長
広島県農業会議理事
広島県農業会議ウーマンネット広島会長
全国農業委員会女性協議会会長


①担い手への支援が大事


理事長
 まず最初に、道下さんは長い期間農業委員をされていますが、担い手政策として、どのような事が重要だとお考えになられているかお聞きしたいと思います。


道下会長
 2005年に就任いたしましたので、かれこれもう20年ぐらいになりました。
 就任時は農地がどこにあるのかもわからず、前任の農業委員さんと農地を実際に見て歩きながら、本当に沢山のことを教えていただきました。
 20年経ちましたが、農業を取り巻く情勢は残念ながら皆様がご存知のような結果になっていて、むしろ厳しい方へ加速していると言わざるを得ない状況だと思っています。
 家庭菜園からスマート農業まで、農業法人、株式会社、合同会社、家族経営、親元就農、兼業農家、元気な定年退職者、若者、等々本当に多様な担い手、多様な施策が必要と思っています。が、第一として考えるのは、やはり農家の所得だと思うんですね。所得を確保し本当に安心して農業に取り組めるような対策が一番だと思います。
 今、政府の方も農産物の適正価格の仕組みづくりを急務で取り組まれています。仕組みを作ることは大変困難と思いますが、ぜひともスピード感をもってやり遂げて頂きたいです。そうすれば、担い手不足も解決し、他に仕事をしながら休日には家族と農業をする兼業農家や、親元就農をされる方や、夢を持って大きくスマート農業されている方、若い方たちは夢に向かってすごく魅力的な農業をされる、このように多様な担い手で農業を支えていくことが出来るようになると思います。理事長はどのようにお考えですか?


理事長
 おっしゃる通りだと思います。ひと頃は農家に農地も集約をして、それで産業としての農業を成り立たせていくというような産業政策に軸足を置いた方向感があったところですが、それだけでは日本の農地を守りながら実際に農業構造を守っていくっていうことは難しいということが明らかになってきましたよね。若い人が大きくこう夢を持ってやるというやり方もあるでしょうし、家族経営で限られた農地を守っていくやり方もあるでしょうし、様々なアプローチで農業に携わる人達が、みんなで力を合わせて結果的には日本の農業を盛り上げていくような、そのような方向感が大事だと思います。
 先ほど、多様な農業者のお話があったんですけども、農業者年金はもともと担い手を支援していくという政策年金であり、また、様々な農業者の方が老後の安心につなげていただける制度です。一方、農業法人の従業員の方々については厚生年金の対象ですので、農業者年金の対象になりません。道下会長は現在、農業法人に所属されています。厚生年金に加入されている立場から農業者年金制度について、魅力を感じる点はありますか。また、道下会長ご自身と農業者年金との個人的な関わりについて教えていただければと思います。


道下会長
 私がお嫁に来た時には、農業者の方は、皆さん農業者年金に入る時代で、私も農業委員さんから紹介があって、農業者年金に入るもんだというぐらいしか思っていなかったです。家族全員、農業者年金に加入していました。その後、息子が大学を卒業するタイミングで農業者年金の制度改正があり、その際、家族全員が特例脱退一時金を受けて、そのお金をフリーストールやパーラーの設備投資にあてました。とても助かりましたが今になって続けておけば良かったと思います。現在は酪農を法人化して5人以上雇用することになり、厚生年金の適用事業所になってからは保険料が労使折半のため、負担が大きいです。厚生年金にしなければ良かったと後悔しています。
 農業者は老後の安心のため、国民年金と農業者年金のセットで加入すべきという指導の方が私は親切だなと思います。農業者年金は一定の要件を満たす方には国から助成がありますので、要件を満たす方は制度を活用すべきだと思います。




②加入したという声があれば配偶者の分も加入推進


理事長
 制度全体として、若い方、女性の加入を進めていくことが次の世代、地域のために重要だと考えております。地域の農家の皆さんに農業者年金を進めていくにあたり、どのような活動が大事だと思われますか。また、効果的なPRポイントがありましたら教えていただければと思います。


道下会長
 去年、広島県内の農業者年金の研修会で長崎県内において活躍する農業委員さんが講師として来県し、楽しい講演してくださったんですが、その中で農業者年金のコマーシャルソングを歌ってくださったんです。楽しい音楽でワンフレーズですが、1回聞くと耳に残りますね。あれはとても良かったです。
 それから徳島県内の農業委員会会長さんからいただいた名刺の裏に農業者年金の加入要件が書いてあり、こういう方は農業者年金に入れますよみたいな感じで、これもすごくいいなと思いました。
 農業者の方と出会う時に、さりげなく名刺をお渡しすると、裏に加入要件の内容が記載されていればそこから話がふくらんでいくこともありますよね。
 それから大人数の集まる研修会や大会などでPRしていくことも大事だと思います。先日、広島県のJA女性部の大会に行ったところ、すごい人数の女性会員さんが集まっていました。残念ながら農業者年金の話の時間が設けられていなくて、このような場面でもPRしてもいいのではないかと感じました。特にフレッシュミズや若い方々など、また、農業者に限らずアピールしていくのは、これから大事なんじゃないかなと思います。
 女性をターゲットにするのであれば、やっぱり女性ネットワークの活用が必要ですね。男性はもちろん農地の持ち主でもあるし、担い手としてすぐ認められ政府からの支援も受けられますが、一方、女性は、家族経営協定を結んで、同時申請しなければならないなど、いろいろハードルが高く、なかなか助成なども受けられないような状況ですね。先日も新規就農者への助成金の査定会議っていうのがあって、営農計画を見ながら面接を行うような会議なんですけど、そこでは必ず農業者年金のパンフレットもお渡しするようにしています。面接を行った方の中で、自分は政策支援を受けられるので農業者年金にもう入りましたよと言われた方がいたんですけど、「奥さんの分は?」「奥さんの分も加入することが奥さんへの愛でしょ」と言うと「そうですね、でもまだ無理です」と苦笑いされていましたが、二人分の掛け金を捻出するのは本当に大変だろうなと思います。
 また全国には1人も女性の農業委員がいらっしゃらない市町村がまだ176もあります。どんどん女性の加入者を増やしていくとともに、一緒に女性の社会的地位の向上にも努めていただけるとありがたいなと思います。


理事長
 ありがとうございます。女性の立ち位置を高めていくことは非常に大事だと思いますし、先ほど会長が新規就農の方に配偶者の方の分も加入してあげるのが愛だよとおっしゃったというのは、まさしくその通りだと思います。今時点ではなかなか余裕がなくて加入できなくてもその時の会長の言葉がずっと記憶に残り、余裕が出たところで加入いただけるんじゃないかなと思います。
 全国的に経営主は入っていて、とりあえず自分だけというような意識がまだまだ残っているところはあると思いますので、そうではなくて、やはり夫婦揃って入っていただくことが、女性にとっても老後にとっても大事なことなんだよという意識とその必要性を基金としてもしっかり発信して女性への推進活動をやっていきたいと思っています。




③長生きに対する備え


理事長
 最後の質問に移らせていただきます。
 人生100年時代と言われる中、特に女性の老後をどう考えるかというのは大事だなと思っているんですけども、女性農業者の皆さんの老後について、会長はどのようにお考えですか?


道下会長
 先日、とある大会で、81歳でIT会社を立ち上げた女性の方のお話しを聞く機会がありまして、その方は80代がすごくワクワクしてとても楽しかった、今90歳になり90代で何が起こるかなともうもうワクワクが止まらないんですという話をされたんですよ。人生120年って言われるような時代に突入したなっていうのをその時すごく思いました。やはり長生きリスクに備えることが誰でも大事だと思いますね。特に農業者は長生きするというデータもありますので(笑)、農業者年金制度のメリットを最大限に活用すべきと思います。


理事長
 その通りですね。人それぞれ自分が何歳まで生きるか分かりませんので長生きに備える必要がありますね。基金としましても農業者の方が安心して老後を過ごしていただくためには農業者年金への加入が必要であることを引き続きPRしていきたいと思います。
 本日は大変有意義なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。


道下会長
 ありがとうございました。




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